フルマラソンでサブエガを達成するには、どれくらいの走力が必要なのでしょうか。
サブエガとは、フルマラソンを2時間50分未満で完走することです。2時間49分59秒以内でゴールすれば達成となります。
フルマラソン2時間50分00秒に対応するVDOTは57.3です。
VDOT57.3では、5000mが17分44秒、10kmが36分48秒、ハーフマラソンが1時間21分23秒に相当します。
ただし、5000mを17分44秒で走れば、必ずサブエガを達成できるわけではありません。
この記事では、サブエガとVDOT57.3の関係、各距離の対応タイム、E・M・T・I・Rペース、スピードをフルマラソンへつなげる考え方を解説します。
VDOTとは現在の走力を表す数値
VDOTとは、レースタイムをもとにランナーの走力を数値化した指標です。
ジャック・ダニエルズ氏が提唱したランニング理論で使われ、異なる距離の記録を比較したり、練習ペースを設定したりするために利用されます。
例えば、5000mを17分44秒で走ったランナーと、ハーフマラソンを1時間21分23秒で走ったランナーは、どちらもVDOT57.3です。
VDOT上では同等のレースパフォーマンスとして評価されますが、実際のスピードや持久力の特性まで同じとは限りません。
短い距離を得意とするスピード型のランナーもいれば、フルマラソンで力を発揮する持久型のランナーもいます。
VDOTはサブエガ達成を保証する数字ではなく、現在の走力や練習強度を考えるための基準です。
サブエガに対応するVDOTは57.3
フルマラソン2時間50分00秒に対応するVDOTは57.3です。
主な距離の対応タイムは次のとおりです。
| 距離 | 対応タイム | 平均ペース |
|---|---|---|
| 3000m | 10分15秒 | 3分25秒/km |
| 5000m | 17分44秒 | 3分33秒/km |
| 10km | 36分48秒 | 3分41秒/km |
| ハーフマラソン | 1時間21分23秒 | 3分51秒/km |
| フルマラソン | 2時間50分00秒 | 4分02秒/km |
サブエガの達成条件は2時間49分59秒以内ですが、VDOTの表示上は2時間50分00秒で57.3となります。
サブエガを目指す場合、VDOT57.3が必要な走力を確認する一つの目安です。
VDOT57.3の練習ペース
VDOT57.3に対応するE・M・T・I・Rペースは次のとおりです。
| 種類 | 1kmの設定ペース | 主な目的 |
|---|---|---|
| Eペース | 4分35秒〜5分04秒 | 有酸素能力の向上・疲労回復 |
| Mペース | 4分02秒 | マラソンペースへの適応 |
| Tペース | 3分49秒 | 閾値の向上 |
| Iペース | 3分30秒 | 最大酸素摂取量の向上 |
| Rペース | 3分15秒 | スピードとフォームの向上 |
これらは、VDOT57.3の走力を持つランナーに対応した設定です。
サブエガを目標にしているという理由だけで、現在の走力に関係なく、このペースで練習するものではありません。
Eペースは4分35秒〜5分04秒/km
VDOT57.3のEペースは、4分35秒~5分04秒/kmです。
Eは「Easy」の頭文字で、ジョグやロングジョグに使用します。
Eペースでは、心肺機能や毛細血管、ミトコンドリアなど、長距離走に必要な有酸素能力の土台を作ります。
サブエガを目指す場合も、練習の中心はEペースです。
ポイント練習以外の日まで速く走ると、疲労が抜けず、重要な練習の質が落ちます。Eペースの範囲内でも疲労が強い日は、設定より遅くして構いません。
気温、風、起伏、体調によって同じペースでも負荷は変わります。時計の数字だけではなく、主観的強度も目安にします。
Eペースの効果や心拍数、ペース設定については別記事で詳しく解説しています。
Mペースは4分02秒/km
VDOT57.3のMペースは4分02秒/kmです。
Mは「Marathon」の頭文字で、理論上のフルマラソンペースを表します。
ただし、サブエガ本番で4分02秒/kmをギリギリ維持すると、GPSの誤差、給水、コース取り、後半のペース低下によって2時間50分を超える可能性があります。
そのため、私はサブエガを狙う実践的なマラソンペース走を、3分55秒から4分00秒/kmで考えています。
4分00秒/kmで42.195kmを走った場合、ゴールタイムは2時間48分47秒です。サブエガに対して1分12秒の余裕を持てます。
練習では、最初から長い距離を3分55秒から4分00秒/kmで走る必要はありません。5kmや10kmから始め、呼吸、心拍数、フォーム、翌日の疲労を確認しながら距離を伸ばします。
サブエガでは、このペースで走れるかではなく、このペースでどれだけ余裕を残せるかが重要です。
Mペースの効果や練習距離、取り入れ方については別記事で詳しく解説しています。
Tペースは3分49秒/km
VDOT57.3のTペースは3分49秒/kmです。
Tは「Threshold」の頭文字です。Tペースは、血中乳酸が徐々に蓄積し始める強度付近で、一般的には1時間程度維持できるペースが目安です。
Tペースでの練習を継続すると、速いペースを一定時間維持する能力が高まり、3分55秒から4分00秒/kmのマラソンペースに余裕を持ちやすくなります。
20分間の連続走や、休息を短くしたクルーズインターバルなどで使用します。
ただし、Tペース走をタイムトライアルにしてはいけません。最後まで設定ペースを維持し、翌週も継続できる強度で行います。
Tペースの決め方や、自己ベストから設定する方法については別記事で詳しく解説しています。
Iペースは3分30秒/km
VDOT57.3のIペースは3分30秒/kmです。
Iは「Interval」の頭文字で、最大酸素摂取量を高めるために使用します。
距離別の設定タイムは次のとおりです。
| 距離 | Iペースの設定タイム |
|---|---|
| 400m | 1分24秒 |
| 600m | 2分06秒 |
| 800m | 2分48秒 |
| 1000m | 3分30秒 |
| 1200m | 4分12秒 |
Iペースでは、400mから1200mを複数回走り、間にジョグや休息を入れます。
Iペースの練習は最大酸素摂取量を高め、サブエガペースに対するスピードの余裕を作るために行います。
ただし、Iペースで走るだけでは、4分00秒/km前後を42.195km維持する持久力は身につきません。
スピードが不足している時期に取り入れ、中強度走や距離走と組み合わせて、短い距離のスピードをフルマラソンへつなげます。
Iペースの本数、距離、休息時間については別記事で詳しく解説しています。
Rペースは3分15秒/km
VDOT57.3のRペースは3分15秒/kmです。
Rは「Repetition」の頭文字で、スピード、ランニングフォーム、脚の動きを高めるために使用します。
Rペースでは、短い距離を速く走り、1本ごとに十分な休息を取ります。
フルマラソン対策としても、シーズンに入る前にRペースの練習を行いランニングエコノミーを向上させておくことは非常に大切です。
Rペースの効果や距離、休息の取り方については別記事で詳しく解説しています。
5000m17分44秒ならサブエガを達成できる?
5000mを17分44秒で走れば、VDOTは57.3です。
しかし、5000mでVDOT57.3に到達しただけでは、サブエガを達成できるとは限りません。
5000mでは、スピードや心肺機能が強く反映されます。一方、フルマラソンでは次の能力も必要です。
5000mを17分44秒で走れても、距離走やマラソンペース走が不足していれば、フルマラソン後半に失速します。
5000mでVDOT57.3に到達し、サブエガに必要なスピードが身についている場合は、持久力の強化を優先します。
単純に走行距離を増やすのではなく、中強度走、ロングジョグ、距離走を段階的に取り入れ、短い距離で発揮できるスピードをフルマラソンへつなげます。
各距離のVDOTから自分の弱点を判断する
5000mでは17分44秒を切れているのに、ハーフが1時間21分23秒へ届かない場合は、スピードに対して持久力が不足しています。
この場合は、速いインターバル走をさらに増やすより、中強度走や距離走を重視します。
5000m、10km、ハーフのすべてがVDOT57.3に到達しているのに、フルで2時間50分を切れない場合は、マラソンに特化した持久力が不足しています。
距離走、マラソンペース走、補給、レース序盤のペース管理を見直します。
反対に、5000mよりハーフやフルのVDOTが高い場合は、持久型のランナーです。
マラソンへの適性は高い一方で、サブエガペースに余裕を持つためのスピードが不足している可能性があります。
中強度走や距離走を続けながら、TペースやIペースの練習でスピードの上限を引き上げます。
目標VDOTではなく現在のVDOTで練習する
サブエガを目指すと、VDOT57.3の練習ペースで走りたくなります。
しかし、練習ペースは目標タイムではなく、現在の自己ベストから算出するのが基本です。
現在のVDOTが57.3に届いていない状態で、Tペース3分49秒/kmやIペース3分30秒/kmを使うと、適正な練習ではなくタイムトライアルになる可能性があります。
設定ペースが速過ぎると、練習を途中で維持できなくなり、フォームが崩れ、疲労が次の練習まで残ります。
現在のVDOTに合ったペースで練習を続け、レース結果が伸びた段階で設定を更新します。
VDOT57.3の練習ペースは、最近のレース結果からVDOT57.3相当の走力が確認できたランナーが使用する目安です。
目標がサブエガというだけで、現在の走力を無視して使用するペースではありません。
私もサブエガ相当のIペース3分30秒/kmと、Mペースに近い4分00秒/kmの練習を試しました。しかし、設定ペースを数本・数km走れただけでは、そのVDOT相当の走力へ到達したとは判断できませんでした。
まとめ
フルマラソン2時間50分00秒に対応するVDOTは57.3です。
主な対応タイムと練習ペースをまとめます。
ただし、一つの距離でVDOT57.3に到達しても、サブエガを達成できるとは限りません。
短い距離のVDOTだけが高い場合は持久力、ハーフまで到達してフルで失速する場合は、マラソンに特化した持久力や補給、ペース配分が課題です。
VDOT57.3のMペースは4分02秒/kmです。サブエガ本番ではGPSの誤差や給水を考慮し、4分00秒/km前後を基準にします。
ただし、練習ペースは目標のVDOT57.3ではなく、現在の自己ベストから算出したVDOTを基準に設定します。
現在の走力に合った練習を積み重ね、短い距離で発揮できるスピードを42.195kmへつなげることが、サブエガ達成につながります。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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